キミの正体 ~実は独占したがり超絶オオカミでした~
結局私は葵くんの腕の中だ……。

子供をあやすみたいに背中をトントンされて、その後は、葵くんに優しく割れ物みたいに抱き上げられて家に帰った。

***

「もう…っ、歩けるから…下ろして?」

「ダメです」

「でも…っ」

帰り道は、ずっとお姫様抱っこ。

さっきまであった目眩は嘘のように消えていた。

だからもう自分で歩けるのに…。

「ダメです」

「…はい」

見下ろされる視線が重く威圧的だ。

「でも……重いでしょ?」

「軽いです」

扱いがもう完全にお姫様で、油断したら紳士的なその言動たちにたちまちやられてしまいそうだ。

「喧嘩…強いんだね」

葵くんが居なかったら無理矢理ホテルに連れていかれてたかもしれない。

そんなことを考えたらゾッとした。

「弱いですよ?」

「え?でも…」

「僕の好きな人が襲われているんです。火事場の馬鹿力のようなものですよ」

「…っ、」

……気安く…そういうこと言わないでよ。

「どうしました? あ、もしかして惚れました?」

「ほっ、惚れてなんて…っ」

なぜだか赤くなった頬を両手で触り必死に熱を冷まそうとする。

……今が夜で良かったかもしれない。

「でも…、なんでカラオケにいるって分かったの…」
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