キミの正体 ~実は独占したがり超絶オオカミでした~
【葵side】

「きゃあああああああああ!!!」

なんの脈絡もなくゴロン、と1回転し地面に叩きつけられる。

その拍子に1晩2人で入っていた布団は剥ぎ取られた。

右手がふいにズキズキと痛む。

慣れないことをしたもんだからどうやら痛めたらしい。

人なんて殴ったのは初めてだった。

「な、な、な、なんで!? え!? もしかして私たち…っ、や、、ヤった……??」

目をぱちくりさせ自分の体を抱きしめた先輩。

昨日の僕のありがたみが全然分かっていないようだ。

「どう……思います?」

朝起きて。

僕と一緒に布団に入っていて。

びっくりしちゃった様子の先輩。

まるで僕が変態かのような眼差しを向けてくる。

「…っ、」

何を思ったのか、そこで先輩は僕から取り上げた布団をペラッ、とめくり中を確認した。

「血は…ない…っ、はじめては血、出るもんね…っ、大丈夫……きっと大丈夫」

何やらブツブツ言っているが、こちらに丸聞こえだ。

‪‪へぇ、先輩まだ、なんですね?‪‪

「昨晩、涙目で『今夜は一緒にいて』と懇願してきたのはどこの誰、でしたっけ?」

先輩の肩がピクリ、と上がる。

信じられない、と言うような眼差しを僕に向け下唇を噛んでいた。
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