キミの正体 ~実は独占したがり超絶オオカミでした~
畳み掛けるようにもう1度尋ねてみる。

「その頼みを1晩聞いてあげたのは……どこの誰で​────」

「葵くん…ですか?」

今度は気まづそうに布団を握りしめた先輩。

「はい。じゃあ、涙目で『今夜は一緒にいて』と懇願してきたのは​────」

「まさか……私…、ですか?」

「はい」

「えっ…嘘……、私ほんとにそんなこと言った!?」

「媚薬のせいでムラムラしていたのに、1晩襲わずにいてあげたんです。もう少し感謝してくれてもいいのでは?」

先輩を部屋に送り届け、健全に帰ろうとした僕の服を引っ張り自分のベッドに連れ込んだ先輩。

挙句の果てには上目遣いで「今夜は一緒にいて」と言ってきた。

これは紛れもない事実。

僕の記憶にはその時の一部始終がきっちり残っていたが本人はその時のことを一切覚えていないらしい。

都合のいい頭だこと。

「この僕を生殺しにした罪、どう償うおつもりですか?」

「罪って……、そんな大袈裟な……っ」

「なんですか?」

「…っ、ごめん、…なさい。でっ、でも!媚薬飲んだのは……っ、葵くんが勝手にやったことでしょ!?」

「あはは、すみません」

「もう…っ、あぁいうことするのやめてよね!? 同意のない性行為は…っ、だっ、ダメなんだからね!?」

「分かってますよ」

僕に抱かれたくない女なんかこの世にいるのかな。
< 81 / 160 >

この作品をシェア

pagetop