キミの正体 ~実は独占したがり超絶オオカミでした~
まぁ確かにヤバいと言えばヤバいし、大丈夫かと言われれば大丈夫じゃない。

「私はあんなクズ男になんて絶対落ちないから」

宣言するように涼太くんを強く見る。

「まぁ、でもそんな心配しなくても葵そこまでクズじゃないっすよ? やべぇ奴ではありますけど」

「クズだよ…」

友達だから庇いたくなる気持ちは分かるけど…

「あははっ……」

ブスブスとほうきを地面に突き刺しながら涼太くんが面白がるように笑った。

「何笑ってるの…」

「すんません……、っ、根はめちゃくちゃいい奴なんすよ? あいつ」

「根……」

涼太くんから見た葵くんはあまりに株が高くて、友達の悪行をフォローしに来たのか? と思ってしまう。

「女を取っかえ引っ変え、なんて噂たっちまってるから誤解してるかもっすけど」

「え? いや……、女の子とキスしてるの私この目で見たから」

朝っぱらから他人の家の前でいかがわしい水音が聞こえてきたことは今でも脳裏に刻みついていた。

別にあの子のことが本気で好きならいいよ!?

でもだったら私とキスしたりするのはおかしいでしょうよ!?

「あはは、まぁそれは仕方ないんですよ。大目に見てあげてください」

仕方ない、ってなんだよ……。

「気持ちが上がっちゃうとキスくらいは見境なくやっちゃうかもっすけど​────」
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