キミの正体 ~実は独占したがり超絶オオカミでした~
予想に拍車をかけるように私の頭の中がどんどん嫌な妄想を膨らませていく。

ーーあぁっ…ん、葵くん……っ、今日…っ、激しいぃー…

ーーあなたが可愛すぎるからいけないんですよ

ーーあぁっ……っ、あぁあああん…っ、

あぁあああああ!!!もう〜〜〜〜〜っ!!

怒り心頭、とはまさにこのことで気がつけばせっかく塗ったファンデーションが崩れ落ちてしまいそうなくらい眉間に皺を寄せていた私。

慌ててふしだらな妄想に歯止めを掛け、冷静さを取り戻そうと胸に手を当てる。

「ふー…、落ち着けー……私ー…」

葵くんがクズなことなんて最初っから分かりきってたことじゃない。

別に今に始まったことじゃ……

ーーここだけの話。葵、体の関係は誰とも持ったことないんすよ?

プチッ、と頭の中で何かが弾け飛ぶ。

あの時ちょっとホッとしちゃった私、返せ〜〜〜っ!!

「ちょっ、玲乃!? おーい」

はっ……、いけない!

我に返ると千紗が私の前で手を振っていた。

「ん? なんだっけ!?」

ちょっとあれこれ考え過ぎてしまったかもしれない。

慌てて脳機能を正常に戻す。

「だからー、玲乃はなんの動物見たいかなってー」

今日は動物園に集中しよう。

そうだ。せっかくの休日なんだから。

「うさちゃんかな!」

「えー? うさぎでいいのー?」

「うんっ、耳が垂れた子見たいー」

「あぁ〜、可愛いよね」

今日くらい葵くんなんてクズな男のことはきれいさっぱり忘れて楽しもう!
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