二十九日のモラトリアム
ハムスターと命
ハムスターと命
「ほな、自分語りもこれぐらいにして、ハムスター見に行こか」
チヒロが立ち上がり、私はまた手を引かれて歩き出す。
去り際、献花台にペコリを頭を下げる。
私のお葬式も、こんな風に花でいっぱいになるんだろうか。
献花台から少し行ったところに、ふれあい広場と書かれた看板が見えた。
小さな建物に自動扉がついていて、私たちまそれをすり抜ける。
中には文字通りふれあい広場が設置されていたが、今はその干し草の広場にはなんの動物の影もなかった。
「あっちみたいだね」
代わりに、奥のガラス戸の方から物音がする。
キュイキュイという鳴き声に、ガサゴソという生き物の動く音。
その扉もすり抜けると、そこにはウサギやモルモット、ハムスターたちがそれぞれのケージの中で自由に動き回っていた。
ハムスターが一番夜行性なのか、活発に動いている。
回し車の上に何匹ものハムスターが乗っていたり、ケージの隅っこに積み重なっていたり、思い思いに過ごしている。
種類別に小屋を分けられているようで、ゴールデンハムスター、ジャンガリアンハムスター、ロボロフスキーと大中小それぞれのハムスターが元気にしている。
昔、友達が飼っていたジャンガリアンハムスターのもっちりとした毛皮の雪見大福みたいな触り心地を思い出す。
試しにケージの中に手を透かしてスキンシップを試みてみる。
どうせすり抜けるだけだと思って差し出した手は――通り抜けることなく、避けられた。
「え?」
見えてないはずなのに、私が手を伸ばすとハムスターたちはそそくさとどこかへ行ってしまう。
何度試しても、私たちのことを気にも留めてない様子なのに捕まらない。
「野生のカン、的なやつなんかな」
私がやっていることを隣で覗き込んでいたチヒロが言う。
見えてないけど、何かを感じているんだろうか。
「なんや、コイツ」
身を屈めていたチヒロが、部屋の隅になにかを見つけた。
一般家庭で使われるような小さめのケージが、物陰に置かれていた。
「わわっ!? コイツ、内臓出とるで!」
チヒロの叫びに、私も思わずケージを覗き込む。
内臓が出ている怖さよりも、ハムスターが心配な気持ちが上回っていた。
「ほな、自分語りもこれぐらいにして、ハムスター見に行こか」
チヒロが立ち上がり、私はまた手を引かれて歩き出す。
去り際、献花台にペコリを頭を下げる。
私のお葬式も、こんな風に花でいっぱいになるんだろうか。
献花台から少し行ったところに、ふれあい広場と書かれた看板が見えた。
小さな建物に自動扉がついていて、私たちまそれをすり抜ける。
中には文字通りふれあい広場が設置されていたが、今はその干し草の広場にはなんの動物の影もなかった。
「あっちみたいだね」
代わりに、奥のガラス戸の方から物音がする。
キュイキュイという鳴き声に、ガサゴソという生き物の動く音。
その扉もすり抜けると、そこにはウサギやモルモット、ハムスターたちがそれぞれのケージの中で自由に動き回っていた。
ハムスターが一番夜行性なのか、活発に動いている。
回し車の上に何匹ものハムスターが乗っていたり、ケージの隅っこに積み重なっていたり、思い思いに過ごしている。
種類別に小屋を分けられているようで、ゴールデンハムスター、ジャンガリアンハムスター、ロボロフスキーと大中小それぞれのハムスターが元気にしている。
昔、友達が飼っていたジャンガリアンハムスターのもっちりとした毛皮の雪見大福みたいな触り心地を思い出す。
試しにケージの中に手を透かしてスキンシップを試みてみる。
どうせすり抜けるだけだと思って差し出した手は――通り抜けることなく、避けられた。
「え?」
見えてないはずなのに、私が手を伸ばすとハムスターたちはそそくさとどこかへ行ってしまう。
何度試しても、私たちのことを気にも留めてない様子なのに捕まらない。
「野生のカン、的なやつなんかな」
私がやっていることを隣で覗き込んでいたチヒロが言う。
見えてないけど、何かを感じているんだろうか。
「なんや、コイツ」
身を屈めていたチヒロが、部屋の隅になにかを見つけた。
一般家庭で使われるような小さめのケージが、物陰に置かれていた。
「わわっ!? コイツ、内臓出とるで!」
チヒロの叫びに、私も思わずケージを覗き込む。
内臓が出ている怖さよりも、ハムスターが心配な気持ちが上回っていた。