PRECIOUS DARK NIGHT
「……あ」
「……は、」
私たちは同時に声を上げた。
彼は私を訝しげな顔で数秒見つめていたかと思うと、すぐにふはっと吹き出した。
感情の振れ幅が凄くて、正直追いつけない。
「な、…ど、どうしたの」
「…っくく、いや、本当に来てくれるんだなって思って」
そう言って肩を震わせながら笑う彼は、なんていうか嬉しそうだ。
「………」
「…なんだ、黙りこくって」
ぐっと眉をしかめて、こちらに視線を投げた不良クン。
「いや、なんていうか…あなたもそういう風に笑うんだなって思ったら、なんか驚いちゃって」
そう言いながらしゃがみ込み、彼と同じ目線の位置に合わせる。
「………」
今度は彼が黙りこくってしまった。
「どうした、の……?」
「いや、なんていうか、俺は“俺”を知らないからな。なんて答えれば良いか分かんねぇ」
頭の後ろをポリポリと掻きながら、難しそうな顔をしてそう言った彼だけれど、やっぱりちょっと嬉しそう。