PRECIOUS DARK NIGHT


急に誰かから足首を掴まれて、心臓が止まりかけた。


「……!?ひぇっ」


ガッチリと、固く強い力が込められてピリリと痛みが走る。


「……おま、え。俺を、助けろ」


今にも死にそうなダミ声で、そんな言葉が地面から這い上がってきて、背筋がゾクリと震える。

な、なんか俺様キャラきた……っ!


「っきゃーー!!変態、触らないでっ……!」


足をブンブンと前後左右に振りまくって、男の手を離した。


ああ、なんて運が悪いんだ……。

引っ越し早々、変な男に遭遇するし。

寮の場所は分からないし。


今日の占い、牡牛座の私が絶対に最下位だ。

逆に、私よりも下がいたら、その人はきっと末期だ。


……なんて、失礼なことを言ってみる。


「───お前、人間の血の味、知ってる?」



それは唐突に、突然だった。

ぼそりと吐き出されたその声に、思わず振り返る。


「…っい、今、なんて……」

「あー……、これ、何だろうって思って」

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