PRECIOUS DARK NIGHT
そう言って、自分の掌を見せてきた彼。
それを目にして、冗談抜きで息が止まりそうになった。
彼の掌に大量に付いていたもの。
それは───
「……血…っ!?」
「ああ、やっぱり?」
「やっぱり、って……?」
さっきから話が噛み合ってないような気が……。
それより、彼の着ていたフード付きパーカーにも血が染み込んでいるのが分かる。
「あ、あなた……っ、怪我、してるの?」
人間の体から大量に流れている血を初めて見たわたしは、たじろいでしまう。
痛々しくて、怖くて、彼から目を逸らしたその時。
「……いや、これは俺の血じゃねぇ」
そう吐き出されたため息に、ビクリと肩が震えてしまう。
だって、その言葉が指す意味は───
「他の人の、血ってこと……?」
人を刺しでもしなきゃ、こんな風に返り血は付かない。
……この人、一体何者?