PRECIOUS DARK NIGHT
「…ここがどこかだけ、教えてくれないか」
その言葉に、またも体を硬直させた私。
何を、言っているんだ……。
まさか、自分が今いる場所が分からないの?
そんなこと、ある……?
「……その、自分の名前、言えますか」
何かに感づいた私は、そっと彼に近づいてそう訊いた。
「………、分からない」
「住所は言えますか……、」
「…住所?知らない」
「じゃ、じゃあ…あなたがなぜ今ここにいるのか、それとなぜ血だらけなのか、その理由を言えますか」
「……」
彼は何かを深く考えた後、簡潔に告げた。
「───何1つ記憶がないんだ」
どうやら、私の感は当たったらしい。
それは、私にとっては凄く面倒なこと。
───どうやらこの不良クン(っぽく見える人)は、“記憶喪失”になっている、らしい。