PRECIOUS DARK NIGHT
黒いウワサ
さぁ、これからどうしよう。
私がこの人を見過ごしてしまったら、きっと彼は間違いなく、今ここで凍死するだろう。
そうなったら私は、人殺し───になってしまう。
だけど、私は1人暮らしでもないし、もっと言えばこれから寮に住む身。
彼を匿うとか、そういうことは出来ない……気がする。
「あの、とりあえず立てますか……?」
服についた血が彼のものじゃないのなら、病院に連れて行く必要もないよね……。
「いや、無理だ……」
わざと言っている感じもしないから、本当にそうなのだろう。
「そう、ですか……」
「なんでそんなこと聞くんだ?」
「……へっ?」
心底訳が分からないというような表情をして、眉をしかめる彼が、私は理解できない。
「だ、だって……私があなたを助けなきゃ、他に誰があなたを助けてくれるって言うの?」
この通り道は、夜が深まるこの時間帯ほど誰も通らなくなる。
彼を見つけてくれる人は、助けられる人は、実質私しかいない。