PRECIOUS DARK NIGHT
「そういう、ものなのか……?優しいな、お前」
ゆっくりと目を見開かせた彼は、驚いたようにそう言って、目元を柔らかくした。
今思ったけど、顔が怖いくらいに整っている人が少しでも表情を崩したら、世の中の女子は全員恋に落ちてしまうんじゃないかな。
彼を見て、そう思った。
もちろん私は、恋に落ちていないけど。
「……別にこれは、優しさとかそういうんじゃじゃないです。ただ、私のせいであなたが凍死したりしたらと思うと心配で……、」
「でも、見ず知らずの男のことを心配してくれるんだろ?……だめなのか、それだけでお前を優しい奴だと決めつけるのは」
曇りひとつない綺麗な漆黒の瞳が、私を捉えている。
静かな瞳に映る私は、彼の質問に動揺しているようだ。
「それは、……知りません」
考えに考えた挙げ句に出た言葉がそれだった。
私の返事に目を丸くした彼が、突然くしゃっと顔を歪めたかと思うと───
「ふは……っ、何だそれ、まるで他人事だな!」
肩を震わせながら、くつくつと楽しそうに笑っていた。
それが、本当に意外で。