PRECIOUS DARK NIGHT
「……ああ、もう何回も謝るので、わざわざ返事をしなくてもいいものだと思ってました」
そんな言い訳を述べた。
さすがにこんなこと言ったら怒るかなと思ったけど、彼は可笑しそうに顔を顰めるだけで、私に何かを言ってくることもなく。
不良なのに、ヘンなの。
ほんと、掴めない人だなぁ……。
出会って早々、彼のことを苦手だと思った私だった。
𓆸 𓆸
「それじゃあ、私が戻ってくるまでそこに隠れていてくださいね」
茂みの影に彼を誘導した私は、そんな言いつけをした。
「…ああ」
低い声でそう落とした彼の言葉を確認して、私は寮の手続きをするために寮長の所へ向かった。
ああ〜〜〜、ほんっとうに良かった!
タクシーを呼んだおかげで、無事翡翠学園に辿り着けた!
学園側から私のスマホに送られてきた寮長室の場所を確認しながら、私は高々とそびえ立つ学生寮に入る。
大きなキャリーケースを引きながら初めて目にする光景に私は目を見開かせた。