パブリックダーリン~私と彼と彼氏~
「うわー最悪だ!これもう食った後じゃん、口ん中プリンの味するわ」

大好きなはずのプリンを目の前にそんな表情をしているのが信じられない。


だってあんなに嬉しそうにしてたのに…

なんでそんなに不快そうな顔をしているの? 


はぁっと気だるそうに息を吐いて、ごそごそとポケットから何か取り出した。

「あ、あった」

さっきなんでポケットに入っているのか疑問に思った銀紙に包まれたガムだった。

“うわーっ、オレこれ嫌いなんだよね!マジで匂いも無理なの!”

「待って彗くん!彗くんそれ食べられな…っ」

私が言い終わらないうちに彗くんが銀紙から剥がしたガムを口の中に入れた。顔をしかめる私の前で平然とした顔でガムを噛み始めた。

「…っ」

あんなに嫌いだって言ってたのに、カラいから嫌だって言ってたのに…


まるで好きなものと嫌いなものが入れ替わったみたいに。


「彗くん…?」

静かに彗くんと目を合わせる。

でもそこにいるのは私の知ってる彗くんには見えない。


そんな顔してたっけ?


そんな声してたっけ?



彗くんなのに彗くんのことが微塵も感じられない。



「どうしたの?急に…」

「………。」

ぶっきらぼうに頭を掻いて、ガムを噛みながら“はぁ”っとめんどくさそうにタメ息をついた。

「別にどうもねぇけど」

「どうもないことないよ!さっきから変だよ、どうしちゃったの!?」

「変なこともねぇーよ、こんなもんだろ」

「全然違う!」

きゅるんとした瞳に笑うと歯を見せるところが可愛い、でも今目の前にいる彗くんは睨むような目で笑うのさえ煩わしそうだった。

「彗くん、どうしたの!?私何かした!?」

「…チッ、めんどくせぇなぁ」

プツンと私の中の何かが切れた気がした。

吐き捨てられたその言葉に。
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