パブリックダーリン~私と彼と彼氏~
「はっ」

「価値ねぇな」


・・・は?


はいっ!って答えようと思ったのに、遮られるように掻き消された。


しかも今なんて言った…?


「あんな価値のない奴と付き合うとか終わってんな」

「…どうゆうことですか?」

柏木先輩が山積みになった漫画を1冊取った。その本が欲しかったのかどうかわからない、ただサッと見るだけで元の山に戻した。

「バカだし五月蠅(うるさ)いし何の能力もないくせに安直で」

体の底からぞわぞわと何かが湧きだって来る。

「価値ねぇだろ」


それは彗くんのことだった。

明るくて元気でいつも私を喜ばせてくれる笑顔が似合う彗くんのこと。


そっか、そうなんだね。

信じられないって思ってたけど本当にそうなんだ。


彗くんから笑顔を奪ったのは柏木先輩なんだ。


上から見下すように私のことを睨んだ。

「あんたも」

でも私だって全然ひるむ気になれなかった。

体の中のぞわぞわが今にも飛び出しそうで抑えきれなかったから。

大きく目を開いてグッと力を入れる。

負けないように上を見て。


「彗くんのこと何にもわかってないんですね」


どうしても止められなかった、止めたくなかった。

「彗くんは人を勇気付けるのが上手いんです!彗くんがいると何でも楽しくなって何でもがんばろうって思えて、それはいつも彗くんが笑ってるから…!」

泣きそうになった、彗くんのことを想ったら。

「彗くんはすごいんです…っ!価値がないなんてことない…価値しかないから!彗くんには価値しかないんですっ!!」

ここがどこかも忘れるぐらい叫んじゃった。

どうしても抑え込めなかった感情が飛び出しちゃって…


急に我に返った。


やばっ、言い過ぎた…!!!


本屋だった、ここ本屋だよ!?

本屋中に聞こえちゃったかもっ

「す、すみません!」

あんなに力いっぱいだったのに急に勢力を失っちゃって、柏木先輩の顔も見れなくなった。

あ、やばい…

えっと…

「すみません!!」 

他に言うことが思い浮かばなくて2回も謝っちゃった。

すぐに下を向くようにして持っていた漫画を戻して言い逃げするしかなくて、とにかく走って走って逃げるしかなかった。

 
いやぁぁぁぁぁぁ~~~~…!!
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