パブリックダーリン~私と彼と彼氏~
「ごめん、小村さんの気持ちには応えられないよ」


………え?


「いくら弟の彼女でもそれは」


それはどーゆうこと?


スッと腕が離された。

ゆっくり上を見れば、柏木先輩が微笑んでた。

「なっ」

息を吸った時、ざわざわする声が耳に入って来た。

だから言葉が詰まって言えなかった。



「あの子、柏木先輩に告白してる?」



…!?


え、何それ!

してない、してない!

全然そんな話してないけど…っ


「でも今弟の彼女って言わなかった?」

「え、1回弟経由して近付こうとしたってこと!?」

「うわー、最悪~!」

「それで断られたからって迫ってるんだ」


ジロジロとみんながこっちを見てる。


購買から近くの自販機、私の叫んだ声が届いてちゃってたんだ…!

でも私はそんなこと言ってない!

柏木先輩に告白だなんてしてない!!!


「ありえない」


冷たい声が私の耳に入って来た。

ざわつく購買の方へ違う!って言おうと思った。


でもみんなの視線が痛くて…

それなのに私の前で柏木先輩は笑ってて…


どうして?

何これ…


「弟のこと、好きじゃないの?」

「…。」

「好きじゃないのに付き合ってるの?」

さらにみんなが噂し始める、柏木先輩の言葉をキッカケに。


「弟可哀そうじゃん!」

「こんな女に騙されてるんだ、悲惨すぎ」

「柏木先輩の弟って誰?」

「あれじゃない、1年のー…」


じんじんと腕が痛んだ。


引っ張ったのは柏木先輩の方なのに、どうして私が悪いの?


みんなが私をそんな目で見てる。

何も言えなくなっちゃったよ。

「……っ」


わざとだ、わざと柏木先輩は…!


そうだよね、ここでは誰より人気な柏木先輩なんだもん。

私が何を言ってもしょーがない、何も伝わらないんだ。

たった一瞬で柏木先輩はみんなを味方にできる。
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