パブリックダーリン~私と彼と彼氏~
手を引かれ階段を上がっていく。

ずっとずーっと上まで上ったら、空き教室ばかりの静かな空間に辿り着いた。

誰もいないしーんとした廊下、足早に階段を駆け上ったケイが足を止めた。

「悪い、守れなくて」

私に背中を向けたまま少し俯いた。

…全然ケイが謝ることじゃないのに。

私の手を握る手が震えてるように思えて、どうしてケイが…

「悪かった、学校(ここ)なら平気かと思ってた」

「……。」

「ごめん」

「…ケイは、悪くないよ」

なんでそんなに寂しい背中なの?

もっと怒鳴ってよ、何やってんだよって怒ってよ、私どうしたらいいかわかんないじゃん…

「ねぇ…、あのね」

握った手にきゅっと力を入れる。

背を向けたままのケイに聞きたくて。

「どうして…こんなことしてくれるの?」

“お前に何かあったら困るんだよ…っ”

なんでケイが困るかわからない。

ケイにとって私はどんな存在なのかな。

「どうしてそんなに私のこと…だって私は彗くんの彼女で、だってっ」

「大切な子だから」

「え?」

振り向いたケイにぎゅっと握り返された。

手から伝わる温度が熱い、熱くて血が巡っていくみたい。


「彗の大切な子だからだよ」


一寸の狂いもなく私の瞳を見てる。

逸らすなんてことできなかった。


「だから…守りたいと思っている。守りたいんだ、紫衣のこと」

「……。」

「俺にとっても紫衣は大切だ」


そんなこと、初めて言われたから…

ドキドキと胸が鳴り始めて苦しくなる。

繋がれた手からこのドキドキが伝わっちゃうんじゃないかって、そう思ったらまたドキドキして止まらない。

心臓が痛い…っ
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