パブリックダーリン~私と彼と彼氏~
「っ!」

柏木先輩が手を伸ばした、だから怖くなってぎゅっと目をつぶった。

だけど触れたのはかけていたポシェットだった。


え、ポシェット?なんで…?


チャックを開けて下の方から何かを取り出した。

黒くて小さい機械みたいな…何それ…


「GPS、よく気付かなかったな」


GPSーーーっ!?
ってそんなちっちゃいの!?

10円玉ぐらいじゃんっ!!


てゆーかなんで、そんなとこからっ

“ポシェット、開いてるよ”

あ、あの時…!?
開いてたポシェットを閉めるフリをして…っ

もしかしてそれからずっと見張られてたってこと?


私の行動全部、柏木先輩が… 

ゾクッと体の奥底から締め付けられたみたいで気持ち悪い。

柏木先輩は最初からそうだったんだ。

優しくて憧れの先輩だと思ってたのに、私のことを見た日からずっと…

「!?」

ダンッと肩を押さえつけるように掴まれた。
力が強くて壁にくっ付いていたのに振動が痛かった。

反対の手で私の顎を持ってクイッと上げた。

「お前の事、むちゃくちゃにしたらあいつどんな顔するだろうな」


べちゃっと床に落ちたひしゃげたプリンが今でも忘れられない。

柏木先輩が持って来てくれたプリンは最初から悪意だったんだ。


悪意しかなかったんだ、私にも… 



でもきっとあのプリンは彗くんの心だよ。



「なんで…」

きゅぅっとスカートの裾を握った。
本当は震えてしょうがなかったけど、泣きそうだったけど、きゅっと力を入れて静かに息をして。

「なんでこんなこと…するんですか?」

キッと柏木先輩の目に力が入る。

「鬱陶しいんだよ」

グーッと肩を掴む力が強くなって痛い、でも彗くんの心はもっと痛かったよね。

「ヘラヘラ、ヘラヘラ能もないくせに」

消えちゃいたいくらい苦しかったよね。

「だから教えてやろうと思って優しいお兄さんが、お前をぐちゃぐちゃにしてあいつに…無意味だって分からせてやるよ」

ふっと笑って私を睨む。

「あいつの苦しむ顔…、好きなんだよ」
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