パブリックダーリン~私と彼と彼氏~
「なんで柏木先輩が紫衣に付き合おうなんて言ったの?」

「それは…」

購買で買って来たミルクデニッシュをかじりながら美月が誰もが思ったであろう質問を聞いて来た。

そうだよね、なんでだろってシンプルに思う疑問だよね… 

潰したフルーツ・オレの紙パックを元に戻してぺたんこになるように折りたたんだ。

「えっと、あのね柏木先輩が私に付き合おうって言った理由は…」

どこから話したらいいんだっけ?

何を話せば…
柏木先輩があんなことを言い出したのはわかってる。

あれは嫌がらせだ絶対!彗くんを苦しめようとしてるだけで私と本当に付き合いたいわけじゃないよ!

でも、それを言っても…

「…。」

「話したくないならいいけど」

「違うの!話したくないわけじゃ…っ」

でも話せないことが多すぎるの。

「……。」

「いいよ、無理には聞かないから。言えない事情が紫衣にもあるんだろうし、それを無理に聞きたいとは思わないし」

袋のまま半分食べ終えたミルクデニッシュを食べやすいようにさらに外に出してパクッとかじる。

「紫衣が私に話したいって思ったら、その時聞くから今はいい」

「美月…」

「だからさっきの質問は取り消す!」

サバサバした美月の性格はあっさりし過ぎてて冷たく感じちゃうかもしれないけど、でもそこが一緒にいて落ち着くんだよね。それは優しさだから。
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