パブリックダーリン~私と彼と彼氏~
「それがいいんだよ、それが最善だ。彗とはもう別れろ、まぁ別れる手段がないけど彗がいないんだ忘れるのが1番だ。そしたら俺とも関係なくなるし、彗のことはっ」

「ふざけないでよ…」

持っていたプリントをくしゃってなるくらい握っちゃった。

ふるふると震えて熱くなった胸が苦しくて苦しくて早く吐き出したい。


私だっていつでも泣きたいわけじゃないよ!

でも泣けてきちゃうんだもん、しょーがないよ!


だって…っ

「ふざけないで!なんでそんなことケイに言われなきゃいけないの!?ケイが決められることじゃないよ!」

ぎゅーってグーにした手が痛かった。

でもどんどん力が入っちゃって震えが止まらなかったの。

「そんなことできるわけないじゃん!できないよ、できない…っ」


そうかもしれない、そうかもしれないよ?

忘れた方がラクかもしれない、もう忘れたいだってその方が…



でも想うたび思い出すんだよ。



彗くんの仕草に彗くんの表情に、言葉遣いにクセも空気感も私に触れる瞬間だって全部が全部愛しく降り注いでくるの。



そんな彗くんに会いたいんだよ、ずっと。




「私の好きな人なんだから!!!」




忘れられるわけないよ。


そんなこと言わないでよ。



ケイにだけは言われたくなかった。



「…っ」

ダッと教室から飛び出した。

くしゃくしゃになったプリントを片手に涙を拭いながら走った。


ケイは追いかけて来なかった。
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