パブリックダーリン~私と彼と彼氏~
ゴクリと息を飲んだ。

でも学校だもんね、まだ最悪の状態からは逃れられるし…

柏木先輩が近付いて来たら付き飛ばしちゃえばいいんだ!

うん、だから大丈夫!

落ち着いて私、まずは静かに息を吸って…

「震えてるの?怖いんだ、俺が」

ゾクッと背筋が凍る、くすって笑ったから。

「じゃあ早く彗を呼んだら?」

じっと私の目をとらえて、顎を掴まれただけなのに固定されたみたいに動けなくなった。

バクバクと心臓が大きく音を出してる。

背中にダラダタって変な汗が流れて来て、さっきまでは大丈夫だって思ってた気持ちが生気を失ったみたい。

動けない…かも、どうしよ…っ

「あの日はびっくりしたね、彗に蹴られるとは思わなかったよ」

柏木先輩の目がぐわんっと大きくなってさらに力が入ったのがわかった。

目をつぶるのも怖くて逸らすこともできなくっ

「もちろん、お返しはさせてもらったけどね?」

お返しは、させてもらったけどね…?

怖くて震えていた体がピクッと止まった。

お返しってなに?
何のお返し…


あの日のお返し…?


やっぱりもっとちゃんと聞いておくんだった。

教えてくれなくてもしつこくもっとちゃんと…っ


“筋トレしてて失敗したんだよ”

“ダンベル落とした”


そんなわけなかったよね、おかしいなって思ったよね…


なんでそのままにしちゃったの私…!


いつもケイは人のことばっか考えすぎなの、何も起きなくなったって自分には起きてるよ。


本当は何度もあったんでしょ。

でも言わなかったんでしょ。


いつも平気な顔して…


私何も気付けなかった。


だってあのアザはまだ新しかった。
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