パブリックダーリン~私と彼と彼氏~
「きゃっ」


離したはずだった腕を逆に掴まれて強い力で引っ張られた。

勢いよく壁にドンッと背中から打ち付けられ、柏木先輩の手が喉を締め付ける。

「お前に何がわかるんだ、知ったような口聞きやがってっ」

離してほしくて両手で柏木先輩の手を掴んだけど、ぎゅーっと少しづつ強くなっていく力のせいで力が入らない…苦しい息がしにくくて苦しい…っ

「なんなんだよ…彗、彗、彗って…」

目を見開いて睨みを利かせ追い立てるみたいに。

「あいつのどこがいいんだよ!!」

廊下に柏木先輩の声が響く、誰もいない廊下は声が木霊して何倍もの大きさになってその必死な顔に息を飲んだ。

「…ないだろ、いいとこなんて。頭は悪いし、役にも立たないし、邪魔なだけだろ、消えたらいいんだよ…いっつもバカみたいに笑って目障りなんだよ!」

「……。」


柏木先輩のことなんて知りたいとは思ってなかった。


だけど、彗くんのことそんな風に思ってたんだ。


それはちょっとだけ理解したみたいに思っちゃった。


さっきまでは私の方が震えてたのに、今は柏木先輩の方が震えてるから。

「俺がどれだけやって来たかも知らないで、能天気なツラしやがって…」


“期待とプレッシャーに悩まされた星はそのストレスの捌け口として彗を攻撃し始めた”


がんばりすぎちゃたんですよね。

期待に応えるのは簡単じゃなくてプレッシャーに押しつぶされそうになりながら、それが孤独だって感じてたんですね。


いつも1人みたいに感じてたんですね。


だから彗くんを1人にしようとした。



羨ましかったんですよね、本当は。



「顔を見ただけで虫唾が走る…っ!」

ゆがませた顔はつらそうに見えた。

私の喉を掴む手は少し弱くなってた。
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