パブリックダーリン~私と彼と彼氏~
Public5.さよならして)

darling1.)

今年の冬はいつもよりあったかくて、寒いって感じる日が少なかったせいかあっという間に月日が流れるように感じた。

冬休みが始まったと思えばすぐに年が明けて、数日もすれば3年生たちは卒業して私たちは2年生になる。


「にーちゃん留学する国決まったんだ」

下駄箱で上履きからスニーカーに履き替える彗くんが教えてくれた。

今日もいつも通り彗くんと帰る。

「そーなんだ!どこに決まったの?」

「カナダ!」

「わぁ~いいねカナダ!よくわかんないけどいいね!」

同じようにスニーカーに履き替えてトントンッと靴をならした。

「なんかね、治安がいいんだって。日本人に優しくて、日本と同じで四季があったり、あと英語の発音がキレイでいいんだって」

彗くんはたまに柏木先輩のことを話してくれるようになった。それにこの話はきっと…

「にーちゃんが教えてくれたんだ」

「そうなんだ、よかったね!」

柏木先輩と話すようになったんだなぁって思うと私もなんだか嬉しくて。

彗くんが嬉しそうに教えてくれるから、私も。

「カナダと言えばメープルシロップじゃん?」

「だね、国旗にもなってるしね!」

「だからおみやげはメープルクッキーにしよっかなって、紫衣ちゃんのもお願いしとくね!」

「やったぁ♬」

まだ行ってもない留学のおみやげを考えてる彗くんは楽しそうで、柏木先輩との関係が変わって来てるんだなって聞かなくてもわかった。

最初から柏木先輩は彗くんにとって自慢のお兄ちゃんなんだ、仲良くできて嬉しいに決まってるよね。


これが彗くんの夢見てた世界なんだもん。
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