パブリックダーリン~私と彼と彼氏~
「って、言ってもどーしたらいいのかなぁ…」

どこへも行く当てもなくただ無理やり作った“寄って行くところ”、屋上に来ちゃった。

なんとなーく屋上(ここ)に来ちゃった、たぶん無意識に。

柵の上に腕を置いてグラウンドの方を眺める、あれ何部だろ?すごい走ってる… 

まだ2月の終わりなのにあったかいなぁ、だから勘違いしちゃって桜がもう咲いちゃってるみたい。そんなあわてんぼうな桜もいるんだね。

そっかぁ、もう春かぁ…


春になれば彗くんと出会って1年になるんだ。


同じクラスになって、最初は…
何とも思ってなかったかな。


一緒に体育祭実行委員になって話すようになって仲良くなって…


好きになった、彗くんのこと。


初めてのデートは駅前のクレープ屋で、美月の試合応援しに行ったし、夏祭りも…

あ、プリクラも撮った!


制服のスカートのポケットからスマホを取り出した。

今でもスマホのカバーに挟んであるんだ、一緒に撮ったプリクラ!

めーっちゃくちゃ嬉しかったもんね、絶対可愛く撮ろうって家で密かにポーズ練習しちゃったりして撮影しながらずっとドキドキしてたんだ。


だからこれは大事な宝物なの。

彗くんとの大事な思い出だから。


でもこの日だったね。



ケイの存在する意味を聞いたのは。



“俺の顔を見る前に彗じゃないってわかったってことは「なんで俺が現れたのか」気付いたってことだろ?”

彗くん自身が柏木先輩から自分を守るために生み出した存在がケイだなんて。

聞いた時はびっくりしちゃった、そんなことってあるんだって。

理解できないことばっかで全然頭が追い付かなかったなぁ。


今でもあんまりわかってないけどね。


わからないよ… 



彗くんから生まれたのがケイだなんて。


わからないの。



私の中では彗くんもケイも別々の人間で、同じに見えて全然違うの。



2人は一緒じゃないの。



だから…



寂しいよ。



いなくなったら寂しい。


あれが最後だったなんて悲しい。


もう会えないなんて、思いたいくないよ。



取り留めのない涙は溢れ続けて、次第にグラウンドは見えなくなった。


もう視界いっぱいの涙で何も見えない。


どれだけ泣いてもしょうがないのに、どうしようもないのに… 


柵に乗せた腕の上に顔を伏せて抑えきれない涙を流した。





もう会えないの?ケイ…
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