パブリックダーリン~私と彼と彼氏~
目つきの悪い彗くんのあとをついて階段を上る。廊下をまっすぐ行った角を右に曲がった奥の部屋に案内された。

「ん」

「え?」

「入れよ」

「…っ」

私より背の高い彗くん、上から見下ろされたみたいで…なんとも言えない気持ちになる。

今ここにいるのは彗くんであって彗くんじゃない。

目つきは悪いし声だって低いし全然彗くんじゃない。

でも…


お顔は彗くんなんだ、そこだけは変わりなく彗くんなんだ!
ドキドキしないわけないじゃん!!


「何?緊張してんの?」

「っ!」

耳元でぼそっと呟いた。

耳に彗くんの息がかかる。

「実は…期待して来た?」

わざとらしくゆっくりとした口調で、低くて落ち着いた声が耳の中にずるっと入って来る。

「そ、そんなわけないでしょ!」

すぐに離れるようにして顔を上げて彗くんの顔を見た。

「誰なのか教えてくれるって言うから来ただけで何も…っ!」

別にムキになったんじゃないから、バカにされて頭に来ただけだから。

「ふーん、じゃあ入れよ」

フッと鼻で笑うように横目で私を見て部屋の中に入って行く、その背中を見ながら小さく深呼吸して中へ入った。
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