パブリックダーリン~私と彼と彼氏~
「何してるの?」

後ろから聞こえた声にピクッと体が揺れた。
その気配はゆっくり近付いてきて私の隣に並んだ。

「母さん、おかえり」

柏木先輩が何食わぬ顔で声をかけた。

お、お母さん!?
私より少し高くてふわっとした茶色の髪をした、これが彗くんのお母さん…!?

白いシャツにタイトめな黒のスカートを履いてるせいか雰囲気は少し怖くもあってより張り詰めた空気になった。

これやばいよね?
絶対もっとやばいことになるよね!?

そんなとこに私に何してんのって感じじゃない?

ノコノコ戻って来ちゃった自分のバカ!

「なんだ、まだいたの?小村さん」

冷ややかな声が私の方にも向いて、キョロキョロって不審に目が揺れる。

なんて言えば…

あ、挨拶?彗くんのお母さんに挨拶から?
いや、そんなほんわかした空気してない!

「星のお友達?」

「ううん、彗の方だよ」

「あら、そう」

彗くんのお母さんが見下ろすように私の方を見た、だからせめて挨拶しようかなって頭を下げた。

「彗、片付けておきなさいよ」


………え?


頭を下げた私のことなんか見てなかった。

「星、駅前のケーキ屋さん行って来たのよ。一緒に食べましょ、星の好きなチョコレートケーキ買って来たから」

「ありがとう、すぐ行くよ」

今目の前がどうなってるのか確認するために顔を上げた。

でも全然わからなかった。


なんなの、この異常な空間は…っ 


おかしくない?

何普通にケーキ誘っちゃってるの?

なんでそれに笑って答えちゃってるの?



どうして何も言わないの?
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