パブリックダーリン~私と彼と彼氏~
ーガシャァンッ 


柏木先輩が持っていたおぼんごと床に叩きつけるように落とした。

スプーンが散らばって、まだ未開封のプリンが転がっていく。

私だけがビクッと体を震わせていた。

「あーぁ、落としちゃった。これも片付けといてよ」

右の口角を上げてフッと息を漏らした。


「彗」


冷ややかな声がずぅーっと廊下に消えていく、無造作に転がったプリンが虚しくて。

何事もなかったかのように柏木先輩は階段の方へ歩いて来た。

えっと、どうしよう…

なんかなんか…

何も言葉が出て来ないよ!


「邪魔だ」


私の耳に息を吹きかけるように、小さな声でそう言った。

耳の奥まで凍てつくようなそんな声で。

「……っ」

お母さんと柏木先輩が階段を降りて行く。

紅茶を入れようか、なんて話をしながら。


これは何?

なんなの…?


ゾクゾクと身震いがする。


おかしいでしょ、こんなの…

そりゃ私が言えたあれじゃないけど、でもこんなの理不尽でしょ。


なんであたりまえみたいなの?

なんでずっと俯いたままなの?


なんであいつは何も言わないの!?



何か言いなよ…!!!
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