パブリックダーリン~私と彼と彼氏~
「体育祭楽しみだな~!」

「うん、…そうだね」

心の中で万歳した手がスッと下に降りた。

「あ、紫衣ちゃんはあんまりなんだっけ?」

「え、あ、そーゆうわけじゃないけど…」  

彗くんが楽しみにするから私も楽しみってことにしておこうかなって、思ったんだけど…顔に出ててなぁ、たぶん。

「…でも玉入れはがんばるから」

体育祭実行委員をやれば出場種目少なくても許されると聞いて立候補したんだよね。
そのおかげで玉入れだけでよくなったからこれは本当に万歳で、しかもこれがキッカケで彗くんと仲良くなって付き合うことになったんだからそれはそれは超々万々々歳なんだけど。

運動が苦手な気持ちは変わらないんだもん!

「ねぇねぇ、体育祭ん時ハチマキ交換しよ!」

しょぼんとする私に彗くんが明るい声でなんだかすてきな響きの提案をして来た。

ハチマキ交換?なんかめちゃくちゃ付き合ってるぽい!

「オレ体育得意だから、オレの運動神経紫衣ちゃんに半分わけてあげる!」

そんなのできるわけないけど彗くんが言うんだったらそれもできちゃうのかなって、そんな笑顔で言われたら思っちゃう。

だってそれだけで嬉しいんだもん。

「する!したいハチマキ交換!」

「同じ赤組だもんね、交換してもバレないし!」

うちの体育祭は縦割りの偶数奇数で赤白分けられるから同じクラスの私と彗くんはもちろん同じ赤組、ハチマキだってテキトーに配られたやつだけど交換するってことに意味があるよねこっそり交換とか意味なくドキドキしちゃうじゃん!

「紫衣ちゃんのハチマキちょーだいね!」

「うん、じゃあ私の壊滅的な運動神経も分けてあげるね!」

「え、それはそれでおもしろそう!新感覚だ!」

「彗くんポジティブ過ぎだよ~」

なぜか前向きに受け入れてるからくすくす笑っていると彗くんが何かに気付いて走り出した。

あ、野田(のだ)先生のお手伝いか。

これから始まる体育祭実行委員会議の資料を持った野田先生が抱えきれない荷物を持っていたから駆け寄って持ってあげていた。

そんなとこにすぐ気付けてすぐ実行できる彗くんは満員の電車で席を率先して譲ってあげるタイプだよね、きっと。
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