パブリックダーリン~私と彼と彼氏~
女子の全レースが終わって男子の番になった。着けたハチマキから感じるこそばゆい気持ちでゴールの前に立った。

今から彗くんのレース…
なんでか私がドキドキしちゃってる。

なんだろ、この謎の緊張…
別に私が走るわけじゃないのになぁ。

彗くんたちが位置に着いた。

よーい!の声の後にパァン!と響くピストルの音で一斉に走り出した。


わーーーっすごい!

言ってた通りだ、初っ端から猛スピードで駆けていく彗くんは2位に大差をつけてゴールに向かって来た。


これ絶対1位だ!
もう勝確!!


「彗くんすごい!」

あざやかな1位にるんるん気分でタスキをかけっ

「!」

上からギロッと睨まれた。

ケイの方だった…!

走ってたのケイだったんだ…!

つい興奮してあたかも彗くんだと思っちゃったよ!


…いや、睨むのはおかしい!!!


ギリッと唇を噛んで仕方なくタスキをケイにかけようと思ったんだけど、背が高いくせに全然しゃがんでくれないからいっぱい背伸びしてもギリギリで思うようにかからない。

もうっ、ちょっとくらい頭下げるとかしてくれたらいいじゃん!ほんと嫌なやつ!

「わっ」

やばい、転ぶ…!

あとちょっとだと思ってぐっと背伸びしたらバランスが保てなくてっ

「何してんだよ」

「…!」

受け止めるように抱きかかえられた。

胸の中にすっぽり収められて、自分じゃない心臓の音が聞こえるぐらい。

「…っ」

すごい、熱い…

「いつまでそうしてんだよ」

「え?」 

「いい加減どけよ、重い」

「な…っ!」

ピタッとくっついたまま上を見たら目を細めていた。

その顔を見てあわてて離れた。

「ちゃ、ちゃんとタスキかけといてよ!それないと記録できないんだから!」

顔が熱い、これは絶対赤くなってる…!

見られたくなくて顔を逸らした。


まだ心臓はドキドキしてて…

私はドキドキしちゃうんだよ、中身は違っても見た目は彗くんなんだもん。

触れただけでドキドキしちゃうんだもん。

全然ドキドキが止まらないよ。
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