パブリックダーリン~私と彼と彼氏~
「………。」


……?

え、長くない?

もう縛り終わってるよね? 


でも何も言われないから動いていいのかわからなくて、しばらくおとなしくこの姿勢を保っていた。


それにしても長いよね?

何してるのかな? 


本当に何かしようとしてる?


「…。」


さすがに長すぎだと思うんだけど、もう振り返ってもいいかな?いいよね?

だってずっとこのままなのも…


ゆーっくりそろっと振り返った。

様子を伺いながら彗くんの方を見た。

「何してるの!?」

なぜか私を拝むみたいに手を合わせてた。

「えっ、あ、紫衣ちゃん!」

見られた!
みたいな顔をしていた。

そこは絶対見るでしょ!
って感じなんだけど。

「私に向かって何してるの!?なんか祈ってる!?」

「こっそりお願いしてたのに!」

「何を!?」

「紫衣ちゃんが玉入れ上手くできますようにって!」

大きな声でそんなこと言われたからびっくりしてパチパチって2回瞬きしちゃった。

でも彗くんの顔は真剣だった。

「玉入れなんかお祈りしなくてもできるよ」

だって玉入れだからね、最悪私いなくても成り立っちゃうんだからね。それくらい体育祭では目立ちたくないんだ。

「じゃあ…」

「じゃあ?」

「紫衣ちゃんの体育祭が楽しい体育祭になりますように!」

もう1度彗くんがパンッと手を合わせた。

にひっと歯を見せて笑って、彗くんの笑顔は太陽より眩しい。



そーなんだ、これが彗くんなんだ。



彗くんのこんなところが好きなんだよ。


明るくて元気で、私を勇気づけてくれるところ。



まぁ玉入れっていうのが全然カッコつかないとこなんだけど…

彗くんはそんなこと気にしないからいいんだよ。


「わかった!ありがとう、玉入れ優勝するね!」

「うん、がんばれ!!」
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