パブリックダーリン~私と彼と彼氏~
…って言ったじゃんか、彗くん。

「だりぃな、まだ終わんねぇのかよ」

なんでグラウンドに戻ったらケイになっちゃうの、なんでなの???

「騎馬戦に棒倒しって張り切り過ぎだろ」

あんなにキラキラの笑顔で私を応援してくれたじゃん、なんで真逆の顔ができるの?


でもたぶん“ケイ”として話してるのは私と2人の時だけだと思う。

中身はケイでも他の友達といる時は“彗くん”のフリをしながら話してる。

わざわざ彗くんのフリをするくらいならケイにならなくてもいいのに。


彗くん、どうして今日は一緒にいてくれないんだろう…


「本当は体育祭出たいの?」

「は?んなわけねぇだろ、誰が出たいかよ」

「絶対そうだよ、出たくないって言いながら本当は出たいから彗くん押し切って出て来てるんでしょ!」

「思ってねぇよ!」

「じゃあ今すぐ変わってよ!」

「……。」

そこで無視するのむかつく!!

お弁当の時はあんなに楽しかったのに、もう1回お弁当の時間来ないかな!

「あ、そうだ紫衣」

「……。」

私もお返しに無視してやろうかと思った。

「誰にも言ってないだろうな?」

「…。」

「おい」

ドスッと胸に来るような重低音ずるい。
見てないけどギロッとした目で睨んでるのがわかるもん。

「…言ってないのわかるでしょ、ずっと係の仕事してるしお昼は彗くんと一緒だったの知ってるでしょ!」

「ふーん、じゃあいいけど」

な、なんなのそれーーーーー!?

もしかしてこれって、見張ってる!?
私が誰かに言わないか見張るために今日彗くんじゃないってこと!?


性格悪すぎじゃん!!!


「…言うつもりないから大丈夫」

「どーだか」

最初はびっくりして、誰かに聞いてほしいって思いもあった。
だけど考えてみたら、それは誰のためにもならないんじゃないかなって。

「彗くんが嫌な思いするかもしれないことは言わないもん!」

そう思ったら簡単には言っちゃいけない気がした。

「じゃあ私今から玉入れだから!彗くんにちゃんとがんばってたって言っといてよね!」
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