パブリックダーリン~私と彼と彼氏~
「美月!ごめん遅れて!」

「紫衣!」

「ギリギリだよねっ」

「まだ入場始まってないからセーフ!」

走って入場口まで向かった。
たぶん私が最後だったと思う、体育祭実行委員のくせにってちょっと睨まれちゃった。

一呼吸置く前に選手入場が始まった。

やばい、ドキドキして来たかも…

「紫衣、引き受けてくれてありがとう」

歩きながら、後ろから美月がこそっと近付いた。

「ううん!…でも、ちゃんと走れるかの保証はできないからね!?走れなかったらごめんね!?」

走るって決めたけど、それとこれは別でちゃんと走ったところでそれがどうなるかは…

ううん、やめよう!そんな風に考えるのは!

キュッとハチマキをほどけないようにきつく縛った。

とにかく全力で走るんだ。


彗くんが見ててくれる…

たぶん!


私が走るのは5人中の4番目、アンカーで走る美月の1個前…アンカーじゃなくてよかったなぁさすがにそれはプレッシャー過ぎるもん。

女子はトラックの半周、第一走者の子が位置に着くとパァン!と鳴ったピストルの音でクラス対抗リレーが始まった。


「………。」


え、案外早いんだうちのクラス…
めちゃくちゃトップ争いしてるじゃん、うわー…

抜いた抜いてるよー…


やばいっ!!!


なかなか出場選手決まらなかったのに思ってたより全然すごい!

バトン渡しもスムーズ!

…みんな練習がんばって来たんだなぁ。

「…。」

ゆっくり息を吸って深呼吸をする。 


次は私の番だ。


ドッドッと音の鳴る胸をなでながらスタートラインに立った。
< 70 / 181 >

この作品をシェア

pagetop