パブリックダーリン~私と彼と彼氏~
もうすぐだ、もうすぐバトンが回って来る…!

「小村さん!」

「はいっ!」

トップで受け取ったバトンを持って勢いよく走り出した。


しっかり前を向いて、とにかくいっぱい足を動かして、腕も負けないぐらい振って走るんだ…!


トラック半周だから距離でいうと100メートル、そんなに長くないよね。

うん、短い短い。


だから大丈夫、一生懸命走れば大丈夫…!


「あ…っ」

気持ちはちゃんとあったのに、やっぱり運動から逃げて練習してないから気持ちばっか先ばしちゃって。


足がもつれちゃった。


「…っ」


やばいっ 

転ぶ…!


「わっ」

ズサァァァッって地面に突っ込むように倒れた。

転んだ拍子に手から離れたバトンがコロコロ転がっていく…


最悪、めちゃくちゃ恥ずかしい。


ガンガン抜かれて行ってる、せっかく1位だったのに…

最後の種目ってこともあってほとんどの生徒がクラス対抗リレーを見てる、だからザワザワする観客の声が全部聞こえて来ちゃって…


どーしよ、走んないと…


ダメだよね?


バトン拾って、もう一度走り出さないと。


ゆっくり体を起こした、涙目になりながら…

こんなことで泣くとか何なのもう…っ

やっぱ走らなきゃよかっ



「紫衣ちゃーーーーん!」



ザワザワする観客の中でひときわ大きな声で叫ぶ声がした。


「がんばれぇーーーー!!!」


これは彗くんの声。


「紫衣ちゃぁぁぁーーーーーーーーん!!がんばれぇぇぇぇーーーーーーっ!!!」


地鳴りがするような声でさすがいつでも声の大きい彗くん…

って逆に恥ずかしいんだけど!!!
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