パブリックダーリン~私と彼と彼氏~
「で、何だっけ?ベビーカステラ?食うんだっけ?」

「え…」

「そう言ってただろ、さっき」

「あ、うん言ってた!」

「どこだよそれ」

はぁっと息を吐きながらめんどくさそうに頭を掻いて、なのにちゃんと叶えようとしてくれるんだ。


だからやっぱ嫌じゃないんだよ。

あんなにむかつくって思ってたのになぁ。


たくさんの夜店が立ち並ぶ夏祭りでベビーカステラの夜店を探すのはちょっと時間がかかった。
これだけお店も多ければ人も多いから、花火が始まったらもっと人でぎゅうぎゅうになるんだろうなぁー…

「あ、美月!」

「紫衣~!やっほー!」

TシャツにGパンのスポーティな格好をした美月はバスケ部の子たち何人かと一緒に来てるみたいだった。

「紫衣何食べてるの?めっちゃいい匂いする」

「ベビーカステラ!食べる?食べていいよ!」

「欲しい、ありがと!」

美月にあげたからみんなもよかったらどうぞって、バスケ部の子たちにもベビーカステラの入った紙袋を前に出した。たくさん入ってたしたぶん食べきれないかなって思って。

「何してんだよ行くぞ」

「え、あっ、待って!」

みんなに配っていたらイライラした様子でケイが急かして来た。

その顔を見て美月が不思議に思った。

「今日の柏木機嫌悪い?どうかした?」

こそっと小さな声で聞いて来た…けど、それはすごく答えづらい。

「んー…、そんなことないよ?全然普通!」

ケイからすればこれが平常運転、でも彗くんからしたら…だけど彗くんじゃないとも言えないし。

「たこ焼き食べるー?ベビーカステラのお礼に!」

「あ、ありがとうっ」

名前知らないけど、美月の友達がつまようじで刺した焼き立てのたこ焼きをくれたからそのまま口に入れた。

熱いっ、でもおいしい!

はふはふしながらたこ焼きを飲み込んで、じゃあそろそろ行くねってばいばいをしてケイの方を見たら…
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