「妹にしか思えない」と婚約破棄したではありませんか。今更私に縋りつかないでください。
「アルペリオさんが、姉上の婚約相手か……」
「ロンダーにとっても、予想外だったの?」
「いや、そういう訳ではないけどね……」

 私は、自分の婚約について弟のロンダーに話していた。
 ロンダーの反応は、なんというか少し悪い。この歯切れの悪さはなんなのだろうか。

「どうかしたの?」
「いや、なんというのだろうか。僕と姉上は実の姉弟ではないだろう?」
「え? ええ、そうだけれど……」

 ロンダーは、いきなり私達の関係性においてとても重大なことを言ってきた。
 アムライド侯爵家には、私以外子供が生まれなかった。そこで、不幸な事故で両親を失ったロンダーが引き取られたのである。
 つまり、私達は実の姉弟ではない。しかしそれは、事実上の関係だ。

「私は、ロンダーのことを弟だと思っているわよ?」
「ああ、僕もだ。姉上のことは姉だと思っている。それ以上でも、それ以下でもない」
「えっと……」

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