「妹にしか思えない」と婚約破棄したではありませんか。今更私に縋りつかないでください。
 そんな中、クルレイド様とロンダーは堂々と誘いを断った。
 その目には迷いがない。彼はランカーソン伯爵夫人の色香に、まったく惑わされていないようである。

「二人とも冷たいですね……まあ、気が変わるということもありますから、今はそれでもいいでしょう」

 クルレイド様とロンダーから袖にされたランカーソン伯爵夫人は、それをまったく気にせずにやにやとしていた。
 彼女は、アルペリオ兄様の腕に抱き着く。男女の関係を否定していたというのに、その動作には一切躊躇いがない。

「アルペリオ、今日はあなたに慰めてもらわなければならないわね。こんな風に断られるなんて、私は悲しいわ」
「……ルノメリアさん、それはもちろん構いませんが、俺の前でそういう誘いはやめてください」
「あら、あなたもまだまだ子供なのね」

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