「妹にしか思えない」と婚約破棄したではありませんか。今更私に縋りつかないでください。
 アルペリオ兄様は最早私のことなんて気にしていなかった。他の男性に粉をかけようとした夫人に対して、嫉妬を露わにしている。
 その様を見て、私は少し吐き気を覚えていた。よくわからないが、気分が悪い。

「姉上、大丈夫ですか?」
「ロンダー、ええ、大丈夫……」
「クルレイドさん……」
「……ここは退くべきか」

 ロンダーの視線に、クルレイド様は少し悔しそうな顔をしていた。
 それは私も同じである。ランカーソン伯爵夫人にしてやられてばかりだったため、なんだか負けたような気分だ。

「おや、もうお帰りですか? せっかく市に来たのですから、もう少しゆっくりされたらいいのに」
「……レミアナ嬢、行きましょう」
「……はい」
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