「妹にしか思えない」と婚約破棄したではありませんか。今更私に縋りつかないでください。
 クルレイド様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
 残念ながら、この場で何を言っても彼女のペースは崩せそうにない。悔しい気持ちはあるが、ここは退くのが一番いいだろう。

「レミアナ嬢、大丈夫ですか?」
「ええ、クルレイド様、すみません。それから、ありがとうございます」
「いいえ、お礼を言われるようなことではないですよ。むしろ、助けるのが遅くなって申し訳ありません」
「いえ、私がランカーソン伯爵夫人の挑発に乗ってしまっただけですから……」

 歩きながら、私は自分の言動が短絡的であったことを改めて理解していた。
 ランカーソン伯爵夫人なんて、気にするべきではなかったのだ。私が反論すればする程彼女は勢いづいていた。冷静に受け流していれば、もっと違う反応だっただろう。
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