ブラックアトリエから不当に解雇されたけど、宮廷錬成師になっていた幼馴染と再会して拾われました〜実は隠されていたレアスキルで最高品質の素材を集めていたのは私だったようです〜
第一話 「解雇」
眠い、休みたい、仕事辞めたい。
そんなことしか考えられなくなってしまったのは、いったいいつ頃からだっただろう?
「昨日命じた炎鹿の角はどうした?」
「す、すみません。別の魔物討伐に行っていたため、まだ採取はできていなくて……」
「さっさと持って来い鈍間が! お前が怠けた分、俺の作業が遅れることになるんだぞ! 徒弟の分際で俺のアトリエに泥を塗るつもりか!」
アトリエの作業場でこちらを怒鳴っているのは、目つきの鋭い金髪の男。
白衣の袖を振り乱しながら、身長差のあるこちらを蔑むように見下ろしている。
彼は錬成師ババロア・ナスティ。
そしてここは、彼が立ち上げた錬成工房――ババロアのアトリエだ。
そこで私――見習い錬成師のショコラ・ノワールは、『素材採取係』として働いている。
「今すぐに取って来い! 今日は目標数の素材が集まるまでアトリエには入れんからな」
「は、はい……」
私は取りかかっていた素材棚の整理を手早く終えて、休む間もなくアトリエを出た。
そして素材採取のために魔物討伐に向かう。
錬成術には素材が必要不可欠だ。
薬草や木材、鉱石や動物素材など。
それらを魔力を用いた調合技法で一つの物質に作り替えることを『錬成術』と呼び、それを生業としている者たちを『錬成師』と呼ぶ。
そして取り分け、魔物から採れる素材は錬成術において重宝されるため、素材採取係の私はこのようにして度々魔物討伐に行かされているのだ。
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