ブラックアトリエから不当に解雇されたけど、宮廷錬成師になっていた幼馴染と再会して拾われました〜実は隠されていたレアスキルで最高品質の素材を集めていたのは私だったようです〜
ババロアのアトリエを追い出された私は、意味もなく町を徘徊していた。
徒弟期間中の破門。
見習い錬成師にとって、まさに死を意味する。
実際に徒弟期間中に破門されて、それからどこのアトリエにも雇ってもらえずに錬成師を諦めた徒弟たちが大勢いると聞いているから。
いっそのことババロアのアトリエの実態をギルドに報告する?
まともに徒弟の面倒を見ずに長時間労働を強制しているとギルドに訴えてみようか?
いや、もしそうしても上手く言い逃れられるだけだろう。
私以外の職人さんや徒弟たちは、一応錬成術の訓練をする時間を与えられているわけだし。
下手に告発をして、むしろ労働環境が悪化してしまったら、職人さんたちにとって最悪の事態になる。
あの人たちに迷惑を掛けたくないからなぁ。
『助けてやれなくてすまなかった』
解雇宣告を受けた後、荷物をまとめるために地下室に行くと、寝床に一枚の紙が置いてあった。
そこには上記の一文のみが記されていて、職人さんや徒弟たちからの手紙だとすぐに悟った。
私を気遣っているところをババロアに見られたらまずいから、こうして手紙だけでも書いてくれたのだと思う。
私も、倒れた時に介抱してくれた礼を綴って、職人さんたちの部屋に手紙を置いておいた。
あの人たちに迷惑は掛けたくないし、成功確率やババロアからの報復のことも考えると、やはり泣き寝入りするしかないだろう。