ブラックアトリエから不当に解雇されたけど、宮廷錬成師になっていた幼馴染と再会して拾われました〜実は隠されていたレアスキルで最高品質の素材を集めていたのは私だったようです〜
「……はぁ」
別に私は、戦闘が得意なわけではない。
魔物に関しての知識が豊富というわけでもない。
だというのにババロアは、師範という立場を利用して無理矢理に私を魔物討伐に行かせている。
自分で素材採取に行く手間が省けるからと、“徒弟”の私をこき使っているのだ。
長時間労働、指導放棄、暴言による精神的侵害。
おかげで私は寝不足や体調不良に悩まされながら苦しい日々を味わわされている。
「前の休息日、いつだったかな……」
休みをもらったのなんて遠い日のことに感じる。
休みたいと思っても、師範のババロアが『働け』と言えば働かなければならない。
それが師範と徒弟の関係。
錬成師ギルドに一人前の錬成師として認めてもらうためには、まず師範の元で五年間の修行が必要になる。
その徒弟期間を終えて、ようやく職人と見做されるようになり、品評会への出品が可能になる。
そして品評会で作品を評価されれば、錬成師として自分のアトリエを開くことができるようになるのだ。
だから私は、自分のアトリエを開くためにババロアに徒弟として雇ってもらった。
けれど、今日まで錬成術の指導をしてもらったことは一度もない。
どころか時間が空けば何かしらの雑務を押しつけてくる、明らかに劣悪な労働環境だ。
「……辞めたい」
切実に思う。
今すぐにすべてを投げ出してしまいたいと。
任されている仕事を全部放ってどこか遠くへ逃げてしまいたいと。
それで大好きなあま〜いお菓子を好きなだけ食べて、幸せな満腹感に浸りながら好きなだけ眠るんだ。
そんなことする度胸もないため、私は諦めて森へと続く道を歩き続ける。
そもそも徒弟として入ったアトリエは辞めてはいけない決まりになっている。
五年の徒弟期間もまともに終えられず、途中で投げ出すような奴は根性無しと見做されて、他のアトリエでも雇ってくれなくなってしまうのだ。
だから辞められない。ババロアの言いなりになるしかない。危険な魔物討伐からは逃れられない。