ブラックアトリエから不当に解雇されたけど、宮廷錬成師になっていた幼馴染と再会して拾われました〜実は隠されていたレアスキルで最高品質の素材を集めていたのは私だったようです〜
第三話 「宮廷に拾われました」
クリムのアトリエに拾われることになった後。
彼の案内で宮廷に向かうことになり、私たちは二人で王都の大通りを歩いている。
その道中、チラリと彼の背中を見て、人知れず他愛のないことを考えていた。
やっぱり昔に比べて、随分と大きくなっている気がする。
十八の男性にしては華奢な方なんだと思うけど、小さい頃から見ている私としてはすごく大きくなったように感じるな。
むしろ昔は私の方が若干背が高かった気がするし。
そんな私は今では立派なおチビさんで、クリムとはだいぶ目線が変わってしまった。
「……僕の顔に何か付いてるのか?」
「……別に」
凝視していたことを悟られてしまって、気まずい思いで目を逸らす。
昔はこんなに険悪な感じじゃなかったんだけどなぁ。
ていうか今さら気付いたんだけど、もしこれからアトリエで一緒に働かせてもらうってなっても、こういう気まずい空気感で過ごさなきゃいけないってことだよね?
それはなんか嫌だな。かといってすぐに仲直りしろと言われてもできるものでもないし。
その対策はおいおい考えるとして、私はとりあえず気になっていることをクリムに尋ねることにした。
「そういえば宮廷錬成師のアトリエで修行しても、徒弟期間を終えたってちゃんと認めてもらえるのかな?」
「……どういうこと?」
「だってさ、宮廷錬成師とか宮廷画家って、ギルドから抜けて宮廷専属の職人になってるんじゃないの? だからギルドからの束縛を受けたりせずに、自由に職人活動ができるって聞いたことあるよ」
だから仮にクリムのアトリエで雇ってもらって、錬成師として修行をしたとしても、結局はギルドに腕を認めてもらうことはできないと思うんだけど。
その辺りはいったいどうなっているんだろうか?
「修業先が宮廷錬成師のアトリエでも、品評会への出品は許されるようになるって聞いたことあるよ」
「えっ、そうなの?」
「僕も宮廷錬成師になってしばらくしてから知ったことだけどね。それに修行期間は五年じゃなくて三年でいいらしい。それだけ宮廷錬成師っていう肩書きが強いんだろうね」
……三年。
本来は五年かかるはずの徒弟修行が、たった三年で済むようになるなんて破格すぎる。
品評会への出品が許されるようになるということ以上に、そちらの情報の方が衝撃が強かった。
「基本的に宮廷錬成師の弟子になろうなんて人はいないから、このことを知らない錬成師も多いって話だよ。だから今まで徒弟入りを志願してきた人はいないし。単に萎縮して志願して来なかっただけかもしれないけど」
「……私もそんなの全然知らなかった」
でもまあ、とりあえず徒弟期間として認めてもらえるみたいでよかった。
どこのアトリエも雇ってくれなくなって、かなり絶望的な状況に陥ってしまったけれど、なんとか首の皮一枚繋がった感じだ。
ただそれも、クリムのアトリエでへまをやらかさなければの話だけど。
一応、徒弟期間中に特別な功績を挙げた場合も、職人としての腕を認められて品評会への出品が可能になるとは聞いたことがある。
そうすれば三年も修行しなくてもよくなるけど、こっちはほとんど望み薄だからね。
変な期待はせず、三年間修行をやり遂げることを第一に考えよう。