ブラックアトリエから不当に解雇されたけど、宮廷錬成師になっていた幼馴染と再会して拾われました〜実は隠されていたレアスキルで最高品質の素材を集めていたのは私だったようです〜
「さっ、着いたよ」
クリムの案内でしばらく町の通りを歩くと、やがて目的地の宮廷へと辿り着いた。
もう三年もこの町で過ごしてきたけれど、ここまで宮廷の近くに来たことはなかったなぁ。
白を基調とした城砦が大きな城壁に囲まれており、門では騎士たちが出入りしている。
その外観だけでもかなりの威圧感があり、近づくのもすごく躊躇われた。
そんな場所に、クリムはずかずかと近づいていく。
致し方なく私も、ビクビクしながらその後に続くと、門の近くでクリムに止められた。
「宮廷内にアトリエがあるから、そこに案内したいんだけど、まずはトルテ国王にショコラのこと話してくる。ちょっとここで待ってて」
「えっ、ちょ……!」
そう言うや、クリムは足早に城内へと入って行った。
たった一人、城門の前に待たされた私は、心細い気持ちで身を小さくする。
一人でこんな場所に置き去りにしてほしくなかった。
門番の人たちから怪訝な視線を向けられる。
横を通り過ぎて行く騎士様たちから物珍しげに見つめられる。
正直騎士さんってあんまり得意じゃないんだよね。
見られているだけで、こちらが何か悪いことでもしているのではないかという気にさせられてしまうから。
早くクリム帰ってこーい、と念じながら十分ほど待っていると、不意に後ろから……
「もしもーし、おチビさーん?」
「――っ!?」
聞き覚えのない男性の声が聞こえてきた。
明らかに私に向けられた声に、思わずびっくりしながら振り返る。
するとそこには、騎士団の制服を来た、癖のある紺色の髪の男性が立っていた。
「……な、なん、でしょうか?」
「いやいや、ここらであんま見ない子だなぁって思ってさ。城に何か用だったりするのか?」
突然話しかけて来て何かと思ったけれど、私が城門近くにいたから声を掛けて来たのか。
騎士として不審者を城に入れないために、見覚えのない人物が付近にいたら声を掛けるようにしているようだ。
紺色の前髪の隙間から、同色の瞳でじっと見据えられた私は、異様な迫力を感じて口籠ってしまう。
「い、いや、その……別に怪しい者ではないと言いますか……ただここで人を待っているだけっていうか……」
一言で説明するのはなんとも難しい。
そのため変に言い淀んでしまい、ますます怪訝な目を向けられてしまった。
「怪しい者ではないって、ますます怪しく見えてきちゃうなーそれ。なんとなーくで声かけてみたけど、まさか本当に黒だったのか? 面倒なことは勘弁してほしいんだけどなぁ」
「い、いや、違いま……!」
「とりあえずまあ、ちょっとこっち来て取り調べさせてもらってもいいかな? 白だったらすぐに解放してあげるからさ」
男性騎士はそう言いながら私の腕を取ってこようとする。
ここから離れるわけにはいかないのに。
苦手な騎士に連れて行かれそうになって、思わず身を強張らせていると……
横から伸びて来た腕が、『ガッ!』とその男性の腕を止めた。
「ちょっと待ってください」
「ク、クリム……?」
横には、待っていた幼馴染の姿があった。