ブラックアトリエから不当に解雇されたけど、宮廷錬成師になっていた幼馴染と再会して拾われました〜実は隠されていたレアスキルで最高品質の素材を集めていたのは私だったようです〜
クリムに手を引かれてやって来たのは、王都にある大きな神殿だった。
様々な神聖的儀式を行う場所で、一般市民にはあまり馴染みがない。
私もここに来たのは一度か二度だけだ。
たぶん他の人たちもその程度だと思うけど、騎士とか冒険者は頻繁にここにやって来ていると聞いている。
その理由は……
「ショコラが“称号”を授かってないかどうか、ここで確かめる」
称号。
神様から祝福されて授かる“加護”のこと。
先天的に授かる称号と、後天的に授かる称号がある。
前者は完全に運と血筋によって発現するものだけど、後者は特定の行動をして条件を満たした者が授かることができる。
そして称号には付随している能力があり、それらは『スキル』と呼ばれている。
神殿では神様に祈りを捧げることで、人に宿っている称号やスキルを確認することができるのだ。
それらを映し出したものを『ステータス』と呼び、神様から授かった恩恵のすべてがそこには記されている。
で、こうして神殿に連れて来られたということは……
「もしかしてクリムは、私が何らかの称号を授かってるから、性質付きの素材を採取して来られたんじゃないかって考えてるの?」
「それくらいしか可能性はないだろ。まあ、そんな称号聞いたこともないから、正直可能性は低いと思うけどね。でも一応調べておこうと思って……」
「そ、そういうことだったんだ……」
ショコラの体のことが知りたいんだ。
なんていきなり言うから、本当に何をされるのか戸惑ってしまったものだ。
紛らわしい言い方をせず、最初からそう言えばよかったのに。
「でも、ステータスを調べても意味ないと思うよ。私、昔に村の教会でステータスを調べたことがあるけど、何の称号も持ってなかったし。今日まで素材採取係しかやってなかったんだから」
「だから一応って言っただろ。もしかしたら何かの拍子に称号の取得条件を満たして、それで得た称号が性質付きの素材に関係してるかもしれないんだから」
まあ、“絶対”にあり得ないとは言い切れないからね。
それに他に考えられる可能性もないから、クリムの言う通り調べてみてもいいかも。
そう思った私は、クリムと一緒に神殿の奥へと進んで行った。