ブラックアトリエから不当に解雇されたけど、宮廷錬成師になっていた幼馴染と再会して拾われました〜実は隠されていたレアスキルで最高品質の素材を集めていたのは私だったようです〜
すかさずナイフを抜いて巨体を蹴飛ばすと、炎鹿は地面に倒れてバタバタと暴れる。
どうやら今の一撃で急所を突けたようで、やがて奴は脱力して静かになった。
直後、炎鹿は不自然に体が固まり、全身が灰となって風に攫われていく。
私に付着した血も不自然に蒸発し、後に残ったのは、唯一灰にならなかった炎鹿の黒角だけである。
「……ふぅ」
私はそれを担ぎ上げて、近くの茂みに隠しておく。
これで一本獲得。
散々魔物討伐をさせられてきたから、凶悪な魔物との戦いも随分と慣れてきた。
田舎村で畑の手伝いをしていた頃では、とても考えられない成長ぶりである。
ま、慣れてきたって言っても、疲れるものは疲れるんだよね。
「さてと……」
残り四本。
それが集め終わらなければ今日はアトリエには帰れない。
強烈な疲労感と眠気に襲われながらも、ババロアの険しい表情が脳裏に浮かんで、私はほぼ無意識のうちに次の標的を探し始めていた。