ブラックアトリエから不当に解雇されたけど、宮廷錬成師になっていた幼馴染と再会して拾われました〜実は隠されていたレアスキルで最高品質の素材を集めていたのは私だったようです〜
「俺は今まで通りやっているはずだ……! なのになぜ、こんなクズみたいなものばかり……!」
彼はその憤りのあまり、手に持っていた『清涼の粘液』を地面に叩きつけた。
バリンッ! と甲高い音が部屋に響き、ガラス片と粘液があちこちに飛び散る。
それでも怒りを抑え切れずに金髪を掻きむしっていると、職人の一人が開いた扉から恐る恐る声を掛けてきた。
「あ、あの、ババロア様……」
「あぁ!?」
「ひいっ!」
憤った反応を見せると、職人はビクッと肩を揺らして怯える。
それでもなんとか持ち堪えながら、手に持っていた木網のカゴを差し出して要件を伝えた。
「そ、そそ、素材採取が終わりましたので、そちらを持って来ま……」
「まだ四時間しか経っていないではないか! もっと状態のいい素材を探して持って来い! お前たちが手を抜いているせいで、俺の錬成物の品質が落ちているのだぞ!」
「すす、すみません!」
職人は慌てた様子で立ち去って行き、再び素材採取へと飛び出して行った。
ババロアのみが残された部屋に、彼の荒々しい鼻息だけが響き渡る。
(そうだ、これはきっと素材探しを怠けているあの職人どものせいだ! 俺の腕が落ちたせいではない……!)
素材の状態が悪ければ、錬成物の完成度に影響が生じる。
そのせいで思い通りの性質が付与できずに、粗悪なものばかり出来上がってしまうのだ。
と、心中で自分に言い聞かせてみるが、ババロアの心はいまだに落ち着きを取り戻せずにいた。