ブラックアトリエから不当に解雇されたけど、宮廷錬成師になっていた幼馴染と再会して拾われました〜実は隠されていたレアスキルで最高品質の素材を集めていたのは私だったようです〜
第五話 「宮廷錬成師の手伝い」
神殿で称号を確かめた後、いよいよクリムのアトリエに向かうことになった。
神殿を出た時にはすでに日は落ちかけていて、城には夕暮れ頃に到着する。
試験に合格している私は、宮廷への立ち入りを認められている状態なので、クリムに付き添う形で初めて城の中へと入って行った。
白を基調とした内壁と天井の高い廊下。滅多に見ることのない高貴な雰囲気を放つ騎士やご令嬢たちと何度もすれ違い、私の緊張感は否応なく増していく。
その中でクリムは、時折騎士や令嬢たちと気軽に挨拶を交わしていて、なんだか別の世界の住人のように映ってしまった。
そんな彼の後ろをビクビクとついて行くと、やがて居館にある一室へと辿り着く。
「ここが僕の錬成工房だよ。居館の部屋の一つを、アトリエとして借してもらってるんだ」
「お、お邪魔します……」
招かれたその部屋は、かなり広々としていた。
左の壁際にはアトリエらしく、大きな作業机と素材棚が置かれており、反対の右の壁際は本棚とソファがある。
真ん中が広々と空いているのは大がかりな錬成術を行うためのスペースにしているのだろう。
どの設備も、私が想像しているものより一回り大きく、さすが宮廷錬成師様のアトリエだと痛感させられてしまう。
さすがに立派だなぁ、と思う傍らで、私は一つの不安を静かに募らせていた。
……ここで、共同生活をするわけだよね。
「基本的にアトリエの中にあるものは自由に使ってくれていいよ。寝起きや着替えも隣の部屋が空いてるから。あと、城の設備は使用人か騎士に許可をもらってから使うようにしてくれ」
「……」
クリムは普段と変わりない様子で淡々と説明をしている。
向こうが気にしていないのならそれに越したことはないんだけど、少しは思うところがあったりしないのだろうか?
「今日はもう遅いから、アトリエの手伝いは明日から……」
と、言いかけたクリムは、ずっと黙っている私を見ていよいよ首を傾げた。
「どうかした? さっきからやけに大人しいけど。借りて来た猫みたいに」
「いや、だってさ……」
正直口にするのは躊躇われるけれど、この際だからと思って問いかけてみた。
「クリムは気まずくないの? 私と二人きりでさ……」