ブラックアトリエから不当に解雇されたけど、宮廷錬成師になっていた幼馴染と再会して拾われました〜実は隠されていたレアスキルで最高品質の素材を集めていたのは私だったようです〜

 素材採取を終えて、昼過ぎ頃に町に帰って来ることができた。
 素材は目標数を集めることができて、ついでに称号に付随しているスキルについてもいくつかわかったことがある。
 “採取した素材に上等な性質を付与する”というのは、どうやら素材それぞれに“採取の判定”が決められているらしい。
 例えば“薬草”は『地面から抜いた瞬間』とか、“川の水”は『一定量を川から汲んだ瞬間』とか、“魔物素材”は『倒した瞬間』とか。
 それを私自身が行うことで素材に性質を付与できるようだ。
 だから他人が採って来た素材を、改めて自分のリュックに入れるとか、私が触れるとかしても性質は付与できないらしい。
 なかなかに判定が厳しいスキル、ということである。

 それと、付与される性質は基本的に素材ごとにある程度決まっているようだ。
 薬草系の素材だったら治癒に関係した性質とか、鉱石系の素材だったら鍛治に関係した性質とか。
 これなら薬を作る際は治療系の性質を付与しやすいし、武器防具を作成する際はより強力なものに仕上げやすくなる。
 その辺りは良心的と言うか錬成術のことを考えられたスキルになっていると思った。
 そんな軽い実験も終わらせて、私はクリムのアトリエに戻って来た。

「ただいまー」

 宮廷の長い廊下を心細い気持ちで渡り切り、内心ほっとしながら部屋に入る。
 やはりすぐ近くを王国騎士様たちがすれ違っていくこの環境には慣れないな。
 それに城内を歩いている騎士たちは、基本的には階級が高い人たちが多いと聞くし、余計に緊張感を覚えてしまう。
 なんてことを考えていると、遅まきながらクリムがやや驚いたような目をこちらに向けていることに気が付いた。

「やっぱり素材採って来るの早いね」

「えっ、そう?」

「それだけの量、一人で集めようと思ったら普通丸一日は掛かるはずなんだよ。溶液(スライム)を倒すのだって魔力はそれなりに消費するはずだし、どんな体力と魔力してるんだよ」

「ひ、人を化け物みたいに言わないでよ」

 素材採取係としての経験が長いから、必然的に体力と魔力が鍛えられてるんだよ。
 森の散策も慣れたものだし、身体強化魔法で高速移動もできるし、人より素材採取が得意な自覚は多少はある。
 逆に素材採取をしてばかりだったせいで、錬成術の方はからきし自信がないけど。

「じゃあよろしく頼むよ。今から錬成を始めればそれなりの数を作れると思うから、とりあえず今日の目標は三十個くらいってことで」

 そう言うや、クリムは早々と作業机の方に視線を戻してしまった。
 私はそれに対して、少し思うところがあり、素材棚に採取品を仕舞いながらクリムに問いかける。

「よくそんな軽い感じで任せられるね。私に任せて不安とかないの?」

「言っただろ、昨日の錬成を見て決めたって。ショコラの作ってくれた傷薬はもう充分、王国騎士団で採用できるレベルのものだった。確かに状態や完成度は充分とは言えなかったけど、それを補えるほどの強力な性質が宿ってるからね。ていうかそんなこと聞いてくるなんて、もしかして自信がないのか?」

「むっ……」

 自信は、確かにあまりないけどさ。
 それを改めてクリムの方から言われるのはなんか癪だ。

「ぜ、全然そんなことないし。昨日と同じくらいの傷薬を錬成すればいいだけでしょ。自分の称号のことも少しは理解できてきたし、もしかしたらクリムよりもすごい傷薬を作れるかもしれないよ」

「それはないから安心しなよ」

「えっ?」

 ばっさりと言い返されて、私は憤りよりも疑問が先に浮かぶ。
< 49 / 99 >

この作品をシェア

pagetop