ブラックアトリエから不当に解雇されたけど、宮廷錬成師になっていた幼馴染と再会して拾われました〜実は隠されていたレアスキルで最高品質の素材を集めていたのは私だったようです〜

「ところで、今日と明日の分の傷薬の錬成終わったんだけど、来週分の素材採取に行った方がいいかな?」

 私は自分の作業机の方を見ながらクリムに尋ねる。
 言われた目標数はすでに達成していて、他にやることも特に思いつかなかったので、素材採取の提案をしてみたのだが……

「もう傷薬の錬成はすっかり慣れたみたいだね。それじゃあ次は、武器の錬成の方もショコラに任せようかな」

「えっ……」

「魔物領域の開拓のために、傷薬と武器が大量に必要なるって聞いただろ。武器の錬成の方もショコラに少し手伝ってもらいたいから、今から武器の錬成の方に取りかかってもらう」

 き、騎士団が使う武器まで……?
 まるで予想していなかった返答に、私は思わず困惑した。

「わ、私、武器の錬成なんてしたことないよ……」

「そこは僕が教えるから大丈夫だよ」

「どんな素材を採取して来ればいいかも、全然わからないよ……」

「僕が一緒について行くから心配ないよ」

 続けてクリムは背中を押すように、あるいはプレッシャーをかけてくるように言った。

「何よりショコラの作った武器も見てみたいって騎士たちが言ってるんだ。もしそこをショコラに任せられるようになれば、僕も錬成術の研究に時間を割けるようになるし、ショコラだって錬成師として成長ができるだろ」

「……」

 まあ、確かに成長はしたい。
 今のところ自信を持って作れるのは『清涼の粘液』一つだけなので、これでは錬成師として一人前とはまったく言えないだろう。
 アトリエを開けば武器錬成の依頼だってたくさん来ることになるだろうから、今のうちにコツとか掴んでおきたいし。
 でもいきなり王国騎士団の使う武器を作れというのは重荷が過ぎるよ。
 いや、でも、傷薬の時と同じでこんな機会滅多にないよね。
 それに宮廷錬成師様が直々に指導してくれるなんて、これを逃す手はあるまい。

「もちろん無理強いするつもりはないから、もう少し傷薬の方の錬成に集中したいっていうことならそれでもいいけど……」

「ううん、せっかくの機会だから、武器の方もやらせてもらうよ」

 何より私の作った武器も見てみたいと、待ち望んでいるお客さんたちがいるんだから。
 というわけで私たちは、一緒に魔物領域の山に鉱石素材の採取へ行くことになった。
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