ブラックアトリエから不当に解雇されたけど、宮廷錬成師になっていた幼馴染と再会して拾われました〜実は隠されていたレアスキルで最高品質の素材を集めていたのは私だったようです〜

『ショコラの母親はもう死んだんだ。そんなことしたって死んだ人間は戻って来ることはないんだよ』

 本当に私のことが嫌いでそんなことを言ってきたのかな?
 どうしてあの時冷たくしてきたのかな?
 私に何か隠していることでもあるのかな?
 もしそうなら、そこに何かしらの理由があるんじゃないのかな?
 まあ、これはただの私の妄想だ。
 純粋に私のことを嫌っている可能性もある。
 もし仮に何か理由があったとしても、今までそれを黙ってきたのだから今さら簡単に話してくれるはずもない。
 だから私は疑問を喉の奥に引っ込めて、仕事に集中しようとすると……

「あ、あのさ、ショコラ……」

 意外にも、クリムの方から声を掛けてきてくれた。
 何か言いたげな顔でこちらを見ていて、少し口籠もる様子が窺える。
 その空気感から、何か重要なことを伝えてくれるような感じがして、私は自然と身を強張らせた。
 刹那――

「ゴゴゴッ!」

「「――っ!?」」

 山道の前方から、岩を擦り合わせるような重々しい声を放つ、人型の岩が迫って来た。

「あれが……」

 このカボス山にて多数の被害者を出している魔物――『岩人(ゴレム)』。
 別名『弾け岩』。
 真っ黒な岩をいくつも重ねて作ったような人型の魔物で、成人男性を上回る大きさをしている。
 その巨体から繰り出される重たい一撃は言わずもがな、体が頑丈なことでも知られている。
 それだけでも厄介だというのに、絶命時には爆発まで起こして攻撃をしてくるそうだ。
 ゆえに『弾け岩』。
 その岩人(ゴレム)が前方から五体も迫って来て、私たちは会話を中断して身構えた。

「ショコラ、来る前に話したこと覚えてるな」

「うん、大丈夫」

「じゃあ、まずは僕が手本を見せるよ」

 クリムはそう言うと、私の代わりに前に出てくれた。
 岩人(ゴレム)の体を構成している岩からいい鉱石が採れるので、それを集めて武器素材にするらしい。
 だから岩人(ゴレム)を討伐して鉱石を落とさせるらしいけど……

『えっ、倒したら爆発しちゃうんだよね? それじゃあ貴重な鉱石とか割れちゃうんじゃ……』

 ここに来るまでに岩人(ゴレム)のことを聞いた私は、それが気になって思わず尋ねた。
 倒さなきゃ鉱石を採取できない、でも倒したら爆発して鉱石が砕けるんじゃないかと。

『鉱石自体はかなり頑丈だけど、弾け岩の爆発が強力で鉱石が欠ける可能性は確かにある。そうなれば使い物にならなくなるから……』

 クリムはその時教えてくれた対処法を実践するように、腰に携えていた“長剣”に手を掛けた。
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